東京−大阪、片道六千円

2012.01.14

東京駅の八重洲口からバスに乗ったのは、僕とH君だけだった。カメラマンは仕事の関係で日本からは同行できず、中国の広州で落ち合うことになっていた。乗り込んだのはJRの『東海道昼特急大阪号』というバスだった。東海道を走るバスは安売り競争がはじまっていて、東京と大阪の間にも片道四千円とか、補助席なら二千円台の切符がネットを中心に売られていた。しかし安いチケットはすべて夜行便だった。僕らは大阪から博多まで四千八百円という安い夜行便のチケットを手に入れていたが、それに間に合うように東京を発つことになると、どうしても昼間出発の便になってしまうのだった。

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片道六千円の『東海道昼特急大阪号』は、座席が三列で、背は水平近くまで倒れる高級バスだった。小雨が降りつづく天気だったが、さしたる渋滞もなく、東海道を西に進んでいった。アジアハイウェーの規約では共通の『AH』という標識を道路に掲げることになっていた。最初はその標識かおるかもしれないと車窓に目を凝らしていたが、いくら進んでも、その標識は出てこなかった。車内はすいていて、もの音ひとつしない。そのなかで背を倒して横になると、ついうとうととしてしまう。昨夜、寝ることができなかったH君はひとつ離れた席でこんこんと寝入っている。旅のはじまりは、拍子抜けしてしまうほど静かだった。